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IZEST会議(第三回)報告: Third IZEST meeting Report

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戎崎俊一、和田智之(理研)

第3回IZEST(International Zeta- Exawatt Science and Technology)会議が米国ローレンスリバモア国立研究所で2013年7月17日18日の二日間にわたって行われた。IZEST(http://www.izest.polytechnique.edu/jsp/accueil.jsp?CODE=1332152781112&LANGUE=1)は、会長のGerard Mourou博士(エコールドポリテクニーク)と副会長の田島俊樹博士(UC Irvine)によれば、レーザーを使ってsubatomic physicsを行うための研究コーディネーションを行う国際組織である。高出力レーザーに関する研究所と加速器に関係する研究所を中心に世界の28の研究機関が集まって活動している。これまでレーザーによる物理は原子物理が中心であった。Petawattレーザーが実現し、それを使ったプロトンの100 MeVまでの加速が確認された。ExawattさらにはZettawattレーザーが実現すれば、レーザーによるハドロンのTeV以上への加速、シューウィンガー限界を超えた超強電場による真空の破壊の可能性が現実のものとして見えてきた。これらを踏まえ、Exa-Zettwattレーザーの実現とそれによる新規なsubatomic physicsの展開を議論するのが、今回の会議の目的である。参加者は米国、フランス、ドイツを中心に、約50名が参加した。理研からは和田と戎崎が参加した。そのほかにKEKから中島先生、小山先生、阪大レーザー件から畦地先生が参加していた。

初日の午前は世界で初めて核融合の制御された臨界を目指すNational Ignition Facilityを見学した。計画は順調に進展しており、着々と実験成果を蓄えているとの印象を受けた。

会議では、最初にMourou博士が高強度レーザーの現状と今後の進展についての報告を行った。高強度レーザーをsubatomic physicsに適用するための問題点は、強度の不足ではなく、低い効率と繰り返し時間の長さ(現状では短くて数時間)であることが認識され、その克服のためにICAN(International Coherent Amplification Network: http://cordis.europa.eu/search/index.cfm?fuseaction=proj.document&PJ_RCN=12661600)が組織された。発振器からの出力を分離して数万本のファイバーレーザーで増幅し、コヒーレント結合により大出力パルスを作るシステムが開発された。パルスエネルギー10Jで繰り返し頻度kHzオーダーの当面の目標の実現の道が開かれたことが報告された。

広島大学の本間先生は、高エネルギー光子・光子衝突器による宇宙暗黒物質候補の探索の提案した。電子をレーザー加速し、それをもう一度レーザーに当てることによって、高強度の高エネルギー光子ビームを作りそれを衝突させる。光子場は重ね合わせが可能で、相互作用しないのが低エネルギーの常識であるが、高エネルギー・高強度の極限では、われわれが知っている真空が破れて、真空を構成している暗黒物質粒子が飛び出してくる可能性があるとのことだった。たとえば、暗黒物質を媒質とレーザーの4光波混合の可能性がその例となる。探索できる暗黒物質の質量をneVレベルにまでに下げるためには、真空度の高い環境での長光路の実験が必要であり、静止軌道衛星を使った長基線の実験がその候補となる。戎崎は、この実験を提案中の準静止軌道プラットフォームで実現できるのではないかと考え、今後の検討を約束した。本間先生のアイデアに呼応して、シカゴ大Fermi研究所のTevatronのトンネルを活用した光子衝突器によるヒッグス粒子工場(HfiTT)の報告がW. Chou先生によって二日目になされている。

KEKの中島先生は、IZESTの中に作られた100GeV ascent WGの活動報告を行った。レーザー加速実験の現状をレビューしー100 GeVの加速の可能性を報告した(添付)。

二日目に入り田島先生が、レーザーの強度は確実に上昇しており、Exa-Zetta Watt/cm2に到達すれば、粒子加速、真空破壊、光子衝突器の実現など、原子核・素粒子科学を含むsubatomic physicsへの展開が大きく広がること、そのために必要な繰り返し時間の短縮を実現する技術革新がICANにおいて達成されつつあることを強調した。さらに、降着ブラックホールのジェット内において航跡場加速が起こっていることが理論的に解明されつつあり、強光度場極限における新規物理に新たな地平線を切り開きつつあることを強く印象付けた。

G. Dunne博士は、非線形QEDの理論の話を行い。真空の破れによる電子・陽電子対放射がノミナルなシューインガー限界より3-4桁低い電場でも起こる可能性がある指摘をした。つまり、Exawattレーザーが実現すれば十分可能になることが示された。真空が破れそこから出てくる電子・陽電子ペアの性質、スペクトルを調べることにより、真空を構成している基本粒子の性質を調べることができる。

戎崎は、ブラックホールへのガス降着システムでの10^21eVを超える極限エネルギーへの加速の可能性を議論した。ガス降着円盤によって放射されるアルフベン波の強度を調べると相対論パラメータa0が10^10を超える可能性を指摘した。このような極端に非線形なアルフベン波が、ジェット中を伝搬する内に、航跡場を励起しその中で粒子の加速が伝搬方向に並行に起き、最終的にはエネルギーがZeta eV(10^21 eV)を超える可能性があることを指摘した。このような極端に非線形な波においては、電子が実効的に重たくなって、プラズマ振動数が5桁も下がり、普通では伝搬できない波が、非線形効果で伝搬することが可能になる。このような極端に非線形な波の伝搬の研究は端緒についたばかりであり、今後の広く深い広がりが期待できる。

スタンフォード大学のByer教授からX線小型自由電子レーザーの発表があったリソグラフィーにより周期構造を誘電帯に作り、外部から高強度レーザーを照射して周期構造を作り光増幅を観測したという発表があった。波長を短くすることにより、サブアトムに直接シングルフォトンで相互作用することから、サブアトミックサイエンスへのアプローチには、高強度とは別のアプローチである。また、Byer教授は、ICANプロジェクトの推進者の一人でもある。