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小惑星ベスタにおける物質分化: Material Differentiation in Asteroid Vesta 4

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小惑星ベスタは、HED(hawardite, eucrite, and diogenite)玄武岩質エイコンドライト隕石の母天体と考えられている。これらの玄武岩質隕石は、Calcium-Alminium rich Inclusion (CAI)の析出(太陽系形成の開始時間として一般に使われている)から300万年以内に分化した母天体から形成されたと考えられている。この形成年代は、巨大惑星の形成と初期進化の時期と一致しており、その軌道の大規模な再構成と移動の時期にすでに母天体が存在していたことになる。

探査機Dawnによりベスタの体積と質量、平均密度、そして表面の性質が明らかになった(Russel et al. 2012; Ermakov et al. 2014)。その平均密度からベスタの中心にある核の大きさについての情報が得られた。また、ベスタの南極近くにある巨大なクレータ(Rheasilvia crater)の掘削深度から地殻の深さについての情報が得られた。これらの情報により、ベスタの内部構造の概要が明らかになりつつある(Cosolmagno et al. 2015)。

まず、平均密度から中心核の半径は110km(中心核の密度が8000 kg/m^3:典型的な隕鉄の密度のとき)から140km(5500kg/m^3:金属とその硫化物の混合のとき)であると推定された。これらの、解析からベスタはナトリウム欠乏H型コンドライトとあまり違わない組成を持っていたことが推測される。

一方、Dawn探査機の分光学的なデータから、深く掘削されたクレータの底にもあまりマントル物質である(橄欖岩)があまり検出されなかったので、表面の玄武岩質の地殻の厚さは、85km以上であることが推察される。これは、玄武岩質のHED隕石やベスタ様小惑星(表面の分光学的特徴がHED隕石やベスタと良く似ている)に比べて、かなり少ないことと整合的である。

さらに、HED隕石のeucrite成分の希土類(REE)組成は、ナトリウム欠乏H型コンドライトに対して、7倍から10倍高いことが分かっている。この新石性の高い希土類元素の殻(玄武岩)への濃縮は、母天体であるベスタにおける物質分化に因ると考えられる。もしそうであるならば、eucrite成分が三分の二を占めると推定されるベスタの地殻の総質量は、ベスタ全体の質量の15%-20%を超えることができない。

ところが、地殻の厚さが85kmもあると、この制限を数倍越えてしまう。Cosolmagno et al. (2015)は、これを根拠にベスタが、惑星形成時の原始惑星の生き残りではなく、それ以降、衝突などによる化学組成の変化を受けてなければならないと結論付けた。

一方、Poulet et al. (2015)は、Dawn探査機に搭載された近赤外線分光計による観測では、玄武岩質の岩石の中に少量ある橄欖岩質の岩石の検出はかなり困難で、その割合が10%より少なくなると、ほとんど検出不可能なことを示した。さらに、鉱物のサイズが小さくて50μm以下の場合には、橄欖岩が数十%含まれていてもその検出が困難であることを明らかにした。さらに、繰り返し起こった隕石衝突のために、ベスタ表面はよく破壊・撹拌されていて、Rheasilvia craterのような古いクレーターの表面が後から堆積した玄武岩質の瓦礫で覆われていて不思議でないことを指摘している。実際、ベスタ表面の平均の近赤外線スペクトルは、玄武岩質の鉱物が橄欖岩質の鉱物と礫岩のように混合しているhawarditeのそれで良く説明できる。hawarditeに含まれているMgに富む橄欖岩の化学分析結果は、これらが、不完全な溶融で作られたことを示唆している(Lunning et al. 2015)

Cosolmagno et al. (2015)が指摘した矛盾は、ベスタの地殻は平均的には20-30kmであって、隕石衝突で完全に瓦礫化していてその空隙率が20-50%に達していると考えると解消するかもしれない。

特に新しい(120-150Ma前)クレーターMarciaの近傍には、まだ新鮮な路頭があり、明るい岩石や隕石衝突で持ち込まれた水による変成作用を受けたと思われる暗い部分が見つかっている。この暗い部分には、岩石に含まれるS-OH結合によると考えられる吸収バンドが波長の2.8μmあたりに観測されている(De Sanctis etal. 2015)。このクレーターの底には、水などのガスが噴出したと考えられる穴が観測されている。

[1] Russel, C.T. 2012, Dawn at Vesta: Testing the protoplanetary paradiggm, Science, 336, 684-686.

[2] Ermakov, A.I., et al. 2014, Contraints on Vesta's interior structure using gravity and shape models from Dawn mission, Icarus, 146-160.

[3] Cossolmagno G.J. et al. 2015, Is Vesta an Intact and Pristine protoplanet?, Icarus 254, 190-201.

[4] Poulet, F. et al. 2015, Icarus, Modal mineralogy of the surface of Vesta: Evidence for ubiquitous olivine and identification of meteorite analogue, 253, 364-377.

[5] De Sanctis, M.C. 2015, Mineralogy of Marcia, the youngest large crater of Vesta: Character and distribution of pyroxene and hydratedmaterial, Icarus, 248, 392-406.

[6] Lunning, N.G. et al. 2015, Olivine and pyroxene from the mantle of asteroid 4 Vesta, Earth Science and Planetary Science Letters, 418, 126-135.

カライワシ上目は単系統: Elopomorph is monophyly

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カライワシ上目には、ウナギ目、カライワシ目、ソトイワシ目、フウセンウナギ目などの様々な形の魚が含まれている。これらカワライワシ上目の魚は、幼生期にレプトケファルス(葉形仔魚)と呼ばれる独特の幼生期を経て成長する点で共通しているが、成魚の形や生活形態はさまざまで、これらが単系統なのかどうかについては異論があった。

Inoue et al. 2004は、12種のたんぱく質コード遺伝子、22種のトランスファーRNA遺伝子、二種類のリボゾーム遺伝子のミトコンドリアのDNA配列を用いて系統樹を作製した。でき上った系統樹は、レプトケファルスがカライワシ上目の子孫共有形質であることを一致して示していた。つまり、カライワシ上目は予想に反し、単系統であることがはっきりした。幼生がフォーク状の尻鰭をもつカライワシ目とソトイワシ目が祖先形で、幼生がフィラメント型と丸型の尻鰭を持つフウセンウナギ目とウナギ目が後から分岐した近縁種であることも分かった。

Inoue, J.G. et al. 2004, Mitogenomic evidence for the monophly of elpomorph fishes (Teleostei) and evolutionary origin of the leptocephalus larva, Molecular Phylogenetics and Evolution, 32, 274-286.