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自然災害多発で高まる必要性、求められる本格的な病院船

 病院船とは戦争や大災害の現場で、傷病者に対して医療サービスを提供するための船舶である。2回の世界大戦においては、客船を改造した病院船が活躍した。現在はアメリカ海軍の病院船マーシーが有名である。タンカーを改造してできたマーシーは排水量6万9360トン、1000病床、12の手術室を有する堂々たる総合病院である。コンピューター断層撮影装置(CT)や超音波検査装置など最新の診断装置を備え、各種の医療用ガス、真水(1日281トン)を生産する能力を持つ。2004年に発生したインドネシア・スマトラ島沖地震による津波災害の救援に派遣され、多くの人命を救う活躍をした。特に、CTなどの検査装置が、的確な診断に威力を発揮したとされている。

 日本においては、太平洋戦争時に氷川丸が病院船として活動した。戦後、自衛隊は病院船を持っていないが、輸送艦・護衛艦に「野外手術システム」を搭載することで高度な医療機能を確保するとされている。日本においても本格的な病院船の導入を求める声は繰り返し起こっている。1998年には山中燁子衆議院議員(当時)が国会予算委員会で、(1)大災害時の救急医療(2)離島の巡回医療(3)アジアへの貢献-に資するための「多目的病院船」の導入を提案している。

 また、東日本大震災による津波大災害を受けて2011年に、「災害時多目的船に関する検討会」が内閣府に組織され、翌年に報告書をまとめている。その結論は、費用がかかること、被災地付近への展開に時間がかかること、地震・津波による港湾被害のために病院船への搬送に問題があること、離島への巡回医療としては設備が過大であること、などから専用の病院船というよりは、上記の「野外手術システム」の既存艦船への搭載で十分とする内容となっている。

 しかし、わが国における病院船の必要性は、近年増大している。18年は台風が連続して日本列島を襲い繰り返し深刻な水害を起こしている。インドネシアは2回も甚大な津波被害に見舞われた。私見では、これらは太陽活動の不活発化による小氷河期の到来によるものである。小氷河期においては、ジェット気流の蛇行が頻発し、極端な気候が常態化する。火山噴火や地震も多い。したがって、このような大災害頻発状態は、今後少なくとも10年、長くて100年続くと覚悟しなければならない。日本が連携をより強めるアジア・太平洋地域全体を見ると、常にどこかで病院船を必要とする大災害が発生していることになろう。

 もちろん、病院船のデザインと運用について一層の工夫が必要である。被災地からの患者輸送を円滑にするために、ヘリコプターやエア・クッション型揚陸艇の運用能力の強化が重要である。ヘリ空母や揚陸艦機能を備えた艦船との一体運用も視野に入れるべきだ。逆に、これらの既存艦艇への病院機能の拡大という現在の方向性も強化すべきだろう。少なくとも、1988年に導入された現在の野外手術システムの機器の更新・充実は必須だと思われる。

 大災害の経験から、発生後3日目ぐらいから備蓄していた燃料が底をつき、活動に支障が出ることが指摘されている。この時期に自前の燃料を持ち、自力展開して活動できる医療チームが参加することは重要である。港湾の事業継続計画や日本医師会の災害医療チーム(JMAT)と連携し、円滑で万全な救援・医療体制がとられることを望んでいる。

2019年2月27日 フジサンケイビジネスアイ 高論卓説
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