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新型コロナ、再拡大を警戒 総合力で複数手段を用意し「完封」を

日本においては、新型コロナウイルス感染の第3波が峠を越えた。ワクチン接種も開始された。ただし、国民の大部分が接種を終わるまでまだ少なくとも半年はかかりそうだ。2021年度前半は、通常の手法で感染の再拡大を防ぎつつ経済活動を速やかに復旧させることが重要課題である。
 まず、無症状のままウイルスの排出がはじまることが多い新型コロナ感染症の特異な性質に注意しよう。したがって、健康に異常がなくてもマスクの着用と頻繁な手洗いを継続しよう。特にマスクが重要だ。保因者の口や鼻から飛散するウイルスを含んだ唾液や鼻汁の飛散を防ぎ、受け手の口鼻周辺への直接付着を防ぐ。
 また、喉鼻への保温・保湿効果を持つマスクの着用は、本来人が持つ呼吸器感染症への防御システムの維持という意味でも重要だ。人の気道の皮膚は本来、粘膜と繊毛運動の異物排除機能で保護されている。
 ところが、低温では繊毛運動が鈍り、乾燥すると粘膜が固まってこの機能が失われてしまう。このことが、冬季の低温乾燥条件で、呼吸器感染症の蔓延(まんえん)が起こりやすい原因とされている。
 次に、マスク着用が難しい飲食時の対策だ。乾燥している室内では、会話などで口から飛散する比較的大きな唾液滴(数十ミクロン以上)を通して感染が起こる。空気中をほぼ弾道飛行するこれらの唾液滴は、保因者との間に障害物を置くことで有効に防げる。食堂や居酒屋などでは、客同士の間に透明な衝立を設置することを考えよう。そのような対策を取った店に関しては、通常営業を奨励すべきだと考える。
 乾燥した環境では、直径が10ミクロンよりも小さな液滴は急速に水を失うので、ウイルス表面のSたんぱくが変性して早期に活性を失う可能性が高い。ただし、トイレ、風呂場、シャワー室など常に相対湿度が高い場所では、壁や便器、ドアノブなどに付着したウイルスが活性を保ち続ける可能性がある。それらを触った手指で鼻口眼周辺を触れば感染する。
 一般に、ウイルスの活性は紫外線照射で失われることが分かっている。トイレや風呂場などに紫外線を交ぜた照明を使ったり、壁面などに光触媒塗料を塗ったりしてウイルスの活性を早期に奪う手法が有効である。
 さらに、長時間「3密」状態を強いられる飛行機や列車での移動に関しては、乗客に搭乗直前の核酸検査を義務付けることを考えよう。最近、数時間以内に結果を知らせる核酸検査サービスが開始された。ただし、結果通知までの時間を短縮して1時間以下にすること、一時に大量の件数をさばくことに関しては、まだ課題があると聞いている。ぜひそれらを克服して早期に実現してほしい。ロックコンサートやスポーツイベント、そして接待を伴う飲食店なども、直前に関係者全員の核酸検査を実施してコロナフリーな環境を実現し、心置きなく楽しめるように工夫しよう。
 このように、新型コロナの感染拡大を防ぐ技術的な準備が整いつつある。現状のワクチンでは効果がない変異型の出現も心配されており、ワクチン接種のみでは足をすくわれるかもしれない。これからは、場面に応じさまざまな対抗手段を用意して、社会に広めて早期に実効を上げる勝負となる。その実現には、科学者や技術者だけでなく、実業家、政策担当者らを含んだ総合的な組織力が要求される。
 これまで日本は、比較的軽症でここまできた。このまま最後まで気を緩めずに完封し、世界に範を示そうではないか。

2021年3月1日 フジサンケイビジネスアイ
許可を得て転載