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窒素とエチレンの混合ガスへのガンマ線照射によるシアン化水素合成:Hydrogen cyanide formation in the gas-phase Radiolysis of Mixtures of Nitrogen and Ethylene

Oka et al. (1968)はエチレン(C2H4)と窒素(N2)のガス混合物に60Coからのガンマ線を照射するとシアン化水素(HCN)が形成されることを見出した。そのG値(エネルギー100keV当たりの分子生成数)は、照射時間により0.1-0.5だった。G値が、窒素ガスの分圧に依存しなかったことは、窒素原子か窒素原子イオンがHCN分子形成に関与していることを示している。

OKA, T et al. 1968, Hydrogen Cyanide Formation in the Gas-phase Radiolysis of Mixtures of Nitrogen and Ethylene, 41, 2192-2193.

硫化水素存在下におけるアルミナ触媒によるシアン化水素の生成:Hydrogen Cyanide Synthesis Catalyzed by Alumina in the Presence of Hydrogen Sulfide

BMA過程といわれる反応では、メタン(CH4)とアンモニア(NH3)を触媒(プラチナもしくはアルミナ(Al2O3))のもとで1200度Cに加熱すると、シアン化水素(HCN)が生成される(Endter 1958)。この反応はΔH=252kJ/molで強く吸熱的である。Hillbrand(1984)は、体積濃度10%の硫化水素(H2S)を加えることで、反応温度1000度CにおけるHCN収率が4倍(約80%)に増えることを発見した。

Hillbrand, W. 1984, Hydrogen Cyanide Synthesis Calayzed by Alumina in the Presence of Hydrogen Sulfide under Simultaneous Formation of Aluminum Nitride, Ind. Eng. Chem. Proc. Res. Dev., 23, 476-479.

Endter, F., 1958, Chem. Ing. Tech. 30, 305.

オクロ・オケボンド地域の自然原子炉の周期的な動作:Cycling Operation of the Natural Nuclear Reactor in Oklo/Okebondo Area

20億年前のオクロの自然原子炉から抽出された元素の同位体比から調べると、235Uと239Puの核分裂と中性子捕獲反応の証拠が得られた。有効中性子フラックス(10^21 n/cm^2以下)、消費されたウラン量(5トン以上)、放出されたエネルギー(15GW yr)などが推定されている。また、半減期が24000年の239Puを使って、核分裂反応の実効継続時間が約150000年であることが導かれる。平均出力は100 kW程度と見積もられる。したがって、この原子炉は爆発することなく長期にわたって安定に動作していたことになる。つまり、何らかの自己調節機構を持っていなければならない。

Meshik et al. 2004は、アルミニウムヒドロキシ燐酸の中の希ガスの同位体比を調べた。核分裂由来のXeとKrの濃度が高いことがわかった。その特異なキセノンの同位体比を説明するには、原子炉が、2.5時間の休止期間と30分のパルス的に活動期間からなる周期で間歇的に動作していと考える必要があることが分かった。このような間歇的活動は、中性子を減速する水が高温になって蒸発するため、核分裂の連鎖反応が水が戻ってくるまで停止するという自己制御機構で説明できる。

Meshik, A.P. 2004, Record of Cycling Operation of the Natural Nuclear Reactor in the Oklo/Okelobondo Area in Gabon, Physical Review Letters, 93, 182302-1-4

自然原子炉における生命誕生:The Birth of Life in a Natural Nuclear Reactor

冥王代において、放射性のアクチノイド(トリウム、ウラン、プルトニウム)に富んだ砂鉱床が集積した砂浜環境で生命が誕生した証拠が増えている(Adam 2007)。43億年前の砂浜鉱床にウラナイトが重量で数パーセント含まれていれば、核分裂反応が継続的に発生する可能性があることが分かった。実際、アフリカ、ガボン共和国のオクロには、自然原子炉の化石が存在している。そこでは、約24-19億年前に核分裂反応が臨界に達し、定常的にエネルギーを発生していたことが確認されている(Naudet 1991; Petrov et al. 2005)。

放射性重元素の砂浜鉱床は以下の点で生命の発生場所として都合がいい。

1)原子炉として臨界に達し、大量の電離放射線が供給され、大気中のメタン、窒素、酸素が励起されて反応性のラジカルを形成し、生体始原分子(HCNやHCHOなど)の合成が進む。月の潮汐による一時的な水の浸入が中性子を減速し、砂浜の中に温度分布を作りだし、加熱・冷却、加湿・乾燥が周期的に行われる。これらにより生体始原分子の濃縮が進む。

2)モナザイトの放射性変性が水溶性の燐酸を供給する(Deamer 1997)。また、反応性の高いオルトリン酸ラジカル、二リン酸、多リン酸を形成する(Meldrum et al. 1998)。これらは、有機物と結合する。多くの生化学反応はリン酸化によって活性化する。

3)アクチノイドの適度に反応的なf軌道が前駆的なRNA短鎖の形成を触媒する。特に、ウラニルイオン(UO2)と鉛イオン(Pb++)は、水に溶けると非常に効率のよい多量体化触媒になることが分かっている(Orgel 2004; Sawai et al. 1998; Sawai et al 1997; Ferris et al. 1993)。鉛は、重金属の砂鉱床に集積するわけではないが、核分裂反応の最終生成物としてオクロ自然原子炉でも観察されている(Naudet 1991)。

4)アクノイドは、配位数が高く有機物と複合体を作る。その特異な配位幾何学によりさまざまな有機反応を触媒する(Harrowfield et al. 1991; Marks 1982)。たとえば、Th(IV)イオンもしくはその水酸化コロイドTh(OH)4はタンパク質、アミノ酸、そして核酸と反応して安定な複合体を作って人間の体に集積する(Xu et al. 2003)

1) Adam, Z. 2007, Actinides and Life's Orgins, Astrobiology, 7, 852-872.

2) Naudet, R. (1991) Oklo: des Reacteurs Nucleaires Fossils, Collection du Commissariat a l’Energie Atomique, Paris.

3) Petrov, Y.V., Nazarov, A.I., Onegin, M.S., Petroc, V.Y., and Sakhnovskii, E.G. (2005) Neutron-physical calculation of a fresh zone in the natural nuclear reactor at Oklo. Atomic Energy 98, 296-305.

4) Meldrum, A., Boatner, L.A., Weber, W.J., and Ewing, R.C. (1998) Radiation damage in zircon and monazite. Geochim. Cosmochim. Acta 62, 2509-2520.

5) Orgel, L.E. (2004) Prebiotic chemistry and the origin of the RNA world. Crit. Rev. Biochem. Mol. Biol. 39, 99-123.

6) Sawai, H., Itoh, T., Kokaji, K., and Shinozuka, K. (1997) An approach to prebiotic synthesis of αoligoribonucleotides and description of their properties: selective advantage of-RNA over α-RNA. J. Mol. Evol. 45, 209-215.

7) Sawai, H., Totsuka, S., Yamamoto, K., and Ozaki, H. (1998) Non-enzymatic, template-directed ligation of 2’-5’ oligoribonucleotides. Joining of a template and a ligator strand. Nucleic Acids Res. 26, 2995-3000.

8) Ferris, J.P. (1993) Catalysis and prebiotic RNA synthesis. Orig. Life Evol. Biosph. 23, Nos. 5?6, 307?315.

9) Marks, T.J. (1982) Actinide organometallic chemistry. Science, 217, 989-997.

10) Harrowfield, J.M., Ogden, M.I., and White, A.H. (1991), Actinide complexes of the calixarenes. Part 2. Synthesis and crystal structure of a novel Thorium(IV) Buylcalix[8]arene. Journal of the Chemical Society, Dalton Transactions 1991, 2625-2632.

反証可能性とカメレオン:Falsifiability and chamaeleon

科学的仮説は「もし条件Pが真であるならば、観察可能なQが生じる」という条件命題の形をとっている。しかし、Qが観察されたからと言って、Pが正しいとは言えない。Qを生じる別の仮定が存在してもいいからである。しかし、Qが生じなかった場合には、Pは一義的に否定できる。カール・ポパーはこのことに目をつけて、「反証」という手続きを受け入れるかどうかが、「科学」と「非科学」を分かつ境界線であると考えた。ポパーによれば科学の歴史は「仮説の提起とその反証」という試行錯誤のプロセスであり、競合する諸理論は、反証による自然淘汰のふるいにかけられ、やがては無限遠点にある「真理」に漸近してゆく(以上、野家啓一著、科学の解釈学p166から抜粋)。

ここに示されるポパーの考え方は、科学者たちの実感にあっている。科学哲学者がいかに美しい理論を展開しようと、このポパーの手法だけが唯一、確実な前進を約束していることは科学者は皆知っている。

さて、このポパーの反証を手掛かりとする手法にも、問題がある。いわゆるカメレオンモデルである。カメレオンモデルは、多くのパラメータを包含しており、観測されたほとんどあらゆる現象に対して適合することが可能だ。一般に、観測量の数と同程度、もしくはそれよりも多いパラメーターを内在しておけば、それは不可能ではない、その中で動いている論理が本当の論理と違っている場合でも。したがって、その予言が正確である必然性はないので見分けないと判断を間違える。

コンピュータプログラムがこの問題を深刻にしている。カメレオンは古いプログラムに保護されて生き残るのだ。コンピュータプログラムが科学に使われるようになって50年がたち、3世代を経たものがある。このような古いプログラムの多くは、誰も中身が分からなくなってブラックボックス化している。書いた本人でさえ、詳細は忘れている。それでも、それを世代を超えて継承し、実態と合わなくなった部分は適当にパラメータフィッティングをして使いまわしている場合がある。多くの場合、このような古いプログラムはアドホックなわけのわからないパラメータの宝庫である。また、初期のプログラム者が設定した適用範囲を超えて使っている可能性があるので信頼性に問題がある。

では、どうやったらカメレオンをあぶり出せるのか?一般的な処方箋はないが、見分けるためのポイントはいくつかある。まず、カメレオンは後知は完全だが、予知は苦手だ。新しい観測・実験事実が出たときに馬脚を現すことが多い。ただし、その馬脚は新しいちょっとしたパラメーターの導入か変更で消えてしまう。そういうことを繰り返しているモデルは、カメレオン注意であろう。

次に、上に述べたように、古いブラックボックス化したプログラムに頼っているモデルもカメレオン注意である。こういうプログラムが生き残っている分野は、諸量が複雑に相互作用している系を対象にしている場合が多い。現実に合わせるために、非常に多くのパラメーターを導入し、見かけのパラメータ数を減らすため、それらの間にアドホックな関係を仮定している場合がある。こうなると中で何が起こっているか本当に分からなくなる。

そのようにして、古い旅館のように建て増し建て増ししてわけがわからなくなって来た時に、さすがにこれではだめだと考える個人やグループが現れて、一から直截に考え直して、科学革命が進行する。クーンの科学革命の実態はこういうところにあるかもしれない。

多くの場合、観測・測定精度が向上して、空間分解能や時間分解能が格段に進歩してしまうと、対象の形や変化がつぶさに見えてしまうことで、カメレオンがばれてしまうことが多い。あーだ、コーダ議論している前に、さっさと測ってしまう実験家の精神は、常に大事である。

S学問とY学問の興亡:Rise and Fall of Y-science and S-science

学問の名前にはYで終わるものとSで終わるものがある[1]。前者はAstronomy(天文学)、Geology(地質学)、Biology(生物学)、Chemistry(化学)、Phylogeny(進化学)、Geography(地理学)、History(歴史)などであり、後者はPhysics(物理学)、Mathematics(数学)、Genetics(遺伝学)、Statistics(統計学)、Dynamics(動力学)などである。前者は、発見の学問であり、対象物を分類し記載する。新種を発見し記載することが最も称賛される。Y学問の研究者は、他との違いを強調する傾向があり、体系化を本能的に嫌う。アーネスト・ラザフォードが「切手蒐集」と揶揄したように[2]、趣味の世界との境界は曖昧である。

一方、S学問は、体系化の学問であり、対象物の性質を少数の仮定と方程式により説明することを目標とし、数学との相性が良い。S学問の研究者は、対象物同士の小異を捨て大同を大事にする要素還元主義者である。一方、Y学者からは、「無味乾燥」、「帝国主義」、「単色の世界」と批判される。確かに、S学問が確立してしまった分野は、変化は簡単ではなく、しばらく学問の進歩は止まってしまう。むしろ産業への応用が大事になってゆく。

学問分野は、Y学問により探検、開拓され、S学問によって体系化されて完成を見るという発展形態をとることが多い。20世紀の前半は、19世紀後半に得られたY学問的知見をもとに、天文学と化学の物理学による体系化が進行した。一方で、物理を応用した観測・測定手段が天文学と化学のフロンティアを広げた。分光、電波や紫外線、エックス線などの新しい測定手段により、新種の天体、化合物、反応経路が発見され、Y学問としての側面も活発だったのが化学と天文学だった。これは、S学問たる物理学が周辺のY学問である天文学と化学を侵略したと見えなくもない。「物理帝国主義」とはまさにこの現象を意味したと思われる。

一方、生物学と地球科学の体系化は20世紀の間は進行しなかった。20世紀後半には、天文学、化学における変化はひと段落したこともあって、物理学は停滞した。代わって生物学が分子生物学を中心に華やかに進歩した。

しかし、21世紀になって、状況が次第に変わりつつある。まず、生物や地球は諸量が非線形に強度に相関する系であり、そのようないわゆる複雑系を記述する手法が20世紀中はまだ未発達だった。ところが、20世紀後半に、それらを取り扱う手法が複雑系科学や非線形物理、素粒子物理学の分野で急速に発達し、コンピュータの発達で大規模なシミュレーションが可能になった。それらを適用することにより、非線形な系のふるまいを曲りなりに理解し、記述することが可能になりつつある。また、地球に関しては、20世紀後半になって、人口衛星を用いた全球スケールの観測が行われ、数十年の蓄積を得た。さらに、生物に関しては、主なモデル生物の全ゲノム配列が解読されて、種同士の関係や、遺伝子(群)の進化が定量的に議論されるようになった。もちろん、これらの新データの蓄積は、物理学から派生した各種のセンサーの発達による。約50年の手法開発とデータ蓄積の準備期間を得て、21世紀前半は、物理学(Physics)と遺伝学(Genetics)をはじめとするS学問が、地球科学と生物学を体系化するかもしれない。

1)このことを私に教えたのは小平圭一だった。
2)Ernest Rutherford, "All science is either physics or stamp collecting"

蛇紋岩化反応による非生物的メタン噴出: Gas exhalation of abiotic methane due to serpentization

Ophiolite(橄欖岩、斑糲岩などの超塩基性岩の複合体)の低温蛇紋岩化反応による還元的ガス(メタンと水素ガスを主成分とする)の噴出が世界で4か所(フィリッピン、ニュージーランド、オマーン、そしてトルコ)で報告されている。Etiope et al. 2011は、その一つであるトルコのキマイラ噴出孔のガス成分とその同位体組成を調べた。この噴出孔の名前は、英雄ベレロポーンにより殺されたとされる火を噴く怪物キマイラに由来する。この噴気孔のすぐそばには、ギリシャの火の神Hephaestus神殿の遺跡がある。

蛇紋岩化反応によって放出された水素ガスが、Fisher-Tropsh型反応により一酸化炭素もしくは二酸化炭素と反応してメタンが作られている。ガスは、約5000m^2の大きさのOphiolite岩体の露頭の断層に分布する約50か所の主要噴気孔から噴出しており、そのうち約20か所では半メートルほどの炎が上がっている。メタンの噴出総量は少なくとも年間150-190tに達している。炭化水素などの同位体比から、これらのガスが非生物的に作られていることが確かめられた。また、その水素同位体比から生成温度は50度以下であることが分かった。

このTekiorova ohiolite岩体は、クロムを多く含んでおり、近くにクロム鉱山もある。このような岩体の蛇紋岩化反応で生成されるクロマイトは、Fisher-Tropsh型反応のよい触媒であることが分かっている (Neubeck et al. 2011)。

1)Etiope, G. et al. 2011, Abiotic methane flux from the Chimaera seep and Tekirova ohiolites (Turkey): Understanding gas exhalation from low temperature serpentization and implication for Mars, Earth and Planetary Science Letters, 310, 90-104.

2) Neubeck, A. et al. 2011, Formation of H2 and CH4 by weathering of olivine at temperatures between 30 and 70 °C, Geochemical Transactions,
12, 6.

熱水プールからの亜リン酸の検出: Detection of Phosphite from geothermal pool

Pech et al. 2009は、カリフォルニア州マンモス湖の近くにあるHot Creek Gorgeの熱水プールからのサンプルに0.06 μMの濃度の亜リン酸と0.05μMのリン酸を検出した。しかし、それに続く流れのサンプルからは検出できなかった。亜リン酸は、現代の酸素に富む大気によって速やかに酸化されて、リン酸になったと考えられる。

亜リン酸塩はリン酸カルシウムに比べて1000倍も水に溶けやすく、生命誕生場におけるリンの源として有望視されている。陸上の熱水プールは生命誕生場の有力候補である。ゲノム情報を蓄える核酸、細胞膜を作るリン脂質、エネルギー単体であるATPなど生体にとって基幹的な分子はリン酸を含んでおり、生命誕生場はリン酸が豊富であったはずである。当時は、まだ大気に酸素はなく亜リン酸が豊富に存在したかもしれない。

1) Pech, H. et al. 2009, Detection of Geothermal phosphite using high performance liquid chromathogrpahy Environ. Sci. Technol., 15, 7671-7675.

星雲の冬: Nebula Winter

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超新星残骸や暗黒星雲などの星雲との遭遇は、負の放射強制力による寒冷化、宇宙線フラックス増加によるオゾン層破壊を通して、地球の表層環境の破局をもたらす。その結果の基礎生産量の減少が、酸素濃度の減少と食糧の不足、そして海洋無酸素事変を通して大絶滅を引き起こす。この「星雲の冬」モデルは、超新星残骸遭遇による千年から1万年の変動、暗黒星雲遭遇による10万年から1千万年の変動、そして銀河全体のスターバーストによる1億年スケールの階層的な変動を予言している。

この「星雲の冬」モデルは後期原生代(エディアカラ期を含む)からカンブリア期に起こった全球凍結、大絶滅の繰り返し、そして生物多様性の爆発的増加をうまく説明する。後期原生代の全球凍結事件は770百万年前からカンブリア期まで、約200百万年続き、その間二回の超氷期(スチューリアン氷期とマリノアン氷期)が起き、さらには少なくとも八回の大絶滅が発生している。それは石灰岩の、強いδ13Cの負異常と同期しており、この時期に地球の炭素循環、おそらく光合成による基礎生産量の激変があったことを意味している。

このような環境変化は「星雲の冬理論」で以下のように説明することが可能である(Kataoka et al.2013)。天の川銀河は約60億年前にスターバースト状態にあった。その結果として地球が何度も全球凍結した。それが終わり、正常な状態への過度期には、スターバーストで誕生した多くの星が死期を迎え、特に多くの超新星が爆発したと考えられる。したがって、超新星残骸との遭遇が顕生代に比べて一桁高い頻度で起来たと考えられる。その一つ一つの超新星残骸との遭遇が、局所的な(全球凍結に至らない)氷期の原因となる。この時、地球の表層環境が寒冷化して破局し、大規模な生物大絶滅が起こったのだろう。実際これらは、化石にみられる大絶滅、つまりアクリターク、エディアカラ動物群、微小殻化石群、そして古杯類の絶滅時期と対応付けられる。

また、これらのδ13Cの負異常期の年代が、動物種の系統樹における主要な分岐年代とも一致している。超新星残骸の強い宇宙線が生物のゲノム不安定を引き起こして、その進化を加速したかもしれない。

Kataoka et al. 2014, The nebula winter: the united view of the snowball Earth, mass extinctions, and explosive evolution in the late Neoproterozoic and Cambrian periods, Gondwana Research, 25, 1153-1163

燐酸鉱物における放射線損傷による燐酸の縮合: radiation induced condensation of phosphate in a mineral

グリファイトは、ウランとトリウムを含む燐酸鉱物で、これらによる放射線による構造変化が地質時間にわたって蓄積している。再結晶に必要な温度は比較的高くて、放射線による損傷が蓄積する。グリファイトの結晶形においては、単独の燐酸の他に、放射線損傷によりお互いに結合した(PO4四面体の鎖)が検出された(Chakoumakos et al. 1990)。

Chakoumakos B. C. et al. 1990, Alpha-decay-induced condensation of phosphate anions in a mineral, American Mineralogist, 75, 1447-1450.