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人類の持久走力: Endurance Run Ability of Humans

 人類の特徴として大きな脳を持ち、道具を作り、複雑な認識ができることが強調されている。しかし、運動能力をみると、強さ、器用さ、速さのどれを見ても他の動物に(親類筋に当たるアフリカ大型霊長類を含めて)見劣りがする。人類は、弱く、遅く、不器用な生物である。典型的な現代人よりかなり軽いチンパンジーでさえ、より大きな力を出せ、より速く走り、そして器用に移動する。素手でチンパンジーと戦ったら、ヒトは一人も勝ち残れないだろう。

 しかし、専門家らは、ヒトは強さや速さでは他の動物に負けるが、持久力、特に有酸素運動に関しては、驚くべき能力を持っているという。この能力は、有酸素代謝を必要とする5キロメートル以上の持久走で特に顕著だ。

 ヒトは、特別な訓練をしないアマチュアでも秒速5メートルのスピードを維持できる。人間と同じくらいの体重を持つ犬は、理想的な条件の下でも秒速7.8メートルの全速力を10~15分しか維持できない、特に暑いときには。したがって、大型の犬は4、5キロメートルでは、人間に走り勝てるが、それ以上の距離では、逆に人間が犬よりも速い。馬は10キロメートル走ではヒトより速い。しかし、長距離にわたる繰り返し走では、速度は秒速5~8メートルになり、1日に20キロメートル程度以上は走れない。それ以上走ると、回復不可能な損傷を筋肉骨格系に与えてしまう。

 ヒトと同程度に長距離を走る哺乳類はいるが、暑い条件下で高体温症にならずに長距離を走ることができない。走るときは、歩くときに比べて10倍の熱を発生する。ほとんどの哺乳類が放熱に使っている浅息呼吸では、肺におけるガス交換の問題と呼吸・運動の連結の問題で全力疾走時の大きい酸素呼吸要求を、暑い中で長い時間満たすことができないのだ。

 しかし、ヒトは暑くて乾燥した条件下での疾走時における放熱手段を発達させている。まず、二足歩行(走行)はエネルギー効率が良く、重たい頭部が平衡点に近いので安定して保持できる。

 また、ヒトは歩・走行動作と独立に呼吸ができる。さらに、汗腺を発達させ、毛皮を持っていない。発汗は有効な放熱手段だが、毛皮があると効率が悪い。したがって、他の熱帯の走獣、ハイエナや狩猟犬は、夜もしくは黄昏時にしか長く走れない。ヒトだけが、昼間の暑いさなかに持久走ができる。ただし、発汗のために、1時間に1、2リットルの水が必要である。
持久走力の獲得は、人類とチンパンジーとの分岐の後に起こったと考えられる。弓矢や投槍器をまだ発明しておらず、槍(やり)先の石器さえ持たない旧石器人類は、持久狩猟で食料を得ていたかもしれない。

 その持久走力を生かし、獲物をしつこく追いかけて高体温症を誘発し、獲物の消耗を待って仕留めるわけだ。持久狩猟は、今でも熱帯で乾燥環境において、広く見られるという。

 この議論を聞いて目からうろこが落ちた気がした。マラソンや駅伝の中継をなぜ長々と見て飽きないのか、分かったような気がする。人間性の本質がそこにあるからだ。折から、夏の高校野球が始まっている。チンパンジーにバットを持たせて野球を教え込めば、すごいバッターになるかもしれない。しかし、夏の甲子園では活躍できないだろう。炎天下で数時間駆け回って平気なのはヒトだけなのだ。

サンケイビジネスアイ 高論卓説 2015年8月19日
許可を得て転載

コンドリュールの形成条件: The formation conditions of Chondrules

コンドリュールはだいたいミリメートルぐらいの大きさの主成分がケイ酸の球で、コンドライトと言われる原始的な隕石の主成分である。それらは、太陽系の中の内側部分の最も激しい現象の結果、溶融液滴として形成されたと考えられている。コンドリュールの形成条件やあまりよくわかっていない。Alexander et al. (2008)は、揮発性の元素であるナトリウムの濃度がコンドリュールの形成の間あまり変わっていないことを見出した。ナトリウムの蒸発を食い止めるためには、これまで考えたよりも桁違いに固体密度が高い領域で作られたと考える必要がある。このような領域は、自己重力的になっている可能性が高い。したがって、コンドリュール形成は惑星形成に深く関わりあっている可能性があることが分かった。

1) Alexander, C. M. et al. 2008, The formation conditions of Chondrules and Chondrites, Science, 320, 1617-1619.

小惑星ベスタにおける物質分化: Material Differentiation in Asteroid Vesta 4

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小惑星ベスタは、HED(hawardite, eucrite, and diogenite)玄武岩質エイコンドライト隕石の母天体と考えられている。これらの玄武岩質隕石は、Calcium-Alminium rich Inclusion (CAI)の析出(太陽系形成の開始時間として一般に使われている)から300万年以内に分化した母天体から形成されたと考えられている。この形成年代は、巨大惑星の形成と初期進化の時期と一致しており、その軌道の大規模な再構成と移動の時期にすでに母天体が存在していたことになる。

探査機Dawnによりベスタの体積と質量、平均密度、そして表面の性質が明らかになった(Russel et al. 2012; Ermakov et al. 2014)。その平均密度からベスタの中心にある核の大きさについての情報が得られた。また、ベスタの南極近くにある巨大なクレータ(Rheasilvia crater)の掘削深度から地殻の深さについての情報が得られた。これらの情報により、ベスタの内部構造の概要が明らかになりつつある(Cosolmagno et al. 2015)。

まず、平均密度から中心核の半径は110km(中心核の密度が8000 kg/m^3:典型的な隕鉄の密度のとき)から140km(5500kg/m^3:金属とその硫化物の混合のとき)であると推定された。これらの、解析からベスタはナトリウム欠乏H型コンドライトとあまり違わない組成を持っていたことが推測される。

一方、Dawn探査機の分光学的なデータから、深く掘削されたクレータの底にもあまりマントル物質である(橄欖岩)があまり検出されなかったので、表面の玄武岩質の地殻の厚さは、85km以上であることが推察される。これは、玄武岩質のHED隕石やベスタ様小惑星(表面の分光学的特徴がHED隕石やベスタと良く似ている)に比べて、かなり少ないことと整合的である。

さらに、HED隕石のeucrite成分の希土類(REE)組成は、ナトリウム欠乏H型コンドライトに対して、7倍から10倍高いことが分かっている。この新石性の高い希土類元素の殻(玄武岩)への濃縮は、母天体であるベスタにおける物質分化に因ると考えられる。もしそうであるならば、eucrite成分が三分の二を占めると推定されるベスタの地殻の総質量は、ベスタ全体の質量の15%-20%を超えることができない。

ところが、地殻の厚さが85kmもあると、この制限を数倍越えてしまう。Cosolmagno et al. (2015)は、これを根拠にベスタが、惑星形成時の原始惑星の生き残りではなく、それ以降、衝突などによる化学組成の変化を受けてなければならないと結論付けた。

一方、Poulet et al. (2015)は、Dawn探査機に搭載された近赤外線分光計による観測では、玄武岩質の岩石の中に少量ある橄欖岩質の岩石の検出はかなり困難で、その割合が10%より少なくなると、ほとんど検出不可能なことを示した。さらに、鉱物のサイズが小さくて50μm以下の場合には、橄欖岩が数十%含まれていてもその検出が困難であることを明らかにした。さらに、繰り返し起こった隕石衝突のために、ベスタ表面はよく破壊・撹拌されていて、Rheasilvia craterのような古いクレーターの表面が後から堆積した玄武岩質の瓦礫で覆われていて不思議でないことを指摘している。実際、ベスタ表面の平均の近赤外線スペクトルは、玄武岩質の鉱物が橄欖岩質の鉱物と礫岩のように混合しているhawarditeのそれで良く説明できる。hawarditeに含まれているMgに富む橄欖岩の化学分析結果は、これらが、不完全な溶融で作られたことを示唆している(Lunning et al. 2015)

Cosolmagno et al. (2015)が指摘した矛盾は、ベスタの地殻は平均的には20-30kmであって、隕石衝突で完全に瓦礫化していてその空隙率が20-50%に達していると考えると解消するかもしれない。

特に新しい(120-150Ma前)クレーターMarciaの近傍には、まだ新鮮な路頭があり、明るい岩石や隕石衝突で持ち込まれた水による変成作用を受けたと思われる暗い部分が見つかっている。この暗い部分には、岩石に含まれるS-OH結合によると考えられる吸収バンドが波長の2.8μmあたりに観測されている(De Sanctis etal. 2015)。このクレーターの底には、水などのガスが噴出したと考えられる穴が観測されている。

[1] Russel, C.T. 2012, Dawn at Vesta: Testing the protoplanetary paradiggm, Science, 336, 684-686.

[2] Ermakov, A.I., et al. 2014, Contraints on Vesta's interior structure using gravity and shape models from Dawn mission, Icarus, 146-160.

[3] Cossolmagno G.J. et al. 2015, Is Vesta an Intact and Pristine protoplanet?, Icarus 254, 190-201.

[4] Poulet, F. et al. 2015, Icarus, Modal mineralogy of the surface of Vesta: Evidence for ubiquitous olivine and identification of meteorite analogue, 253, 364-377.

[5] De Sanctis, M.C. 2015, Mineralogy of Marcia, the youngest large crater of Vesta: Character and distribution of pyroxene and hydratedmaterial, Icarus, 248, 392-406.

[6] Lunning, N.G. et al. 2015, Olivine and pyroxene from the mantle of asteroid 4 Vesta, Earth Science and Planetary Science Letters, 418, 126-135.

カライワシ上目は単系統: Elopomorph is monophyly

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カライワシ上目には、ウナギ目、カライワシ目、ソトイワシ目、フウセンウナギ目などの様々な形の魚が含まれている。これらカワライワシ上目の魚は、幼生期にレプトケファルス(葉形仔魚)と呼ばれる独特の幼生期を経て成長する点で共通しているが、成魚の形や生活形態はさまざまで、これらが単系統なのかどうかについては異論があった。

Inoue et al. 2004は、12種のたんぱく質コード遺伝子、22種のトランスファーRNA遺伝子、二種類のリボゾーム遺伝子のミトコンドリアのDNA配列を用いて系統樹を作製した。でき上った系統樹は、レプトケファルスがカライワシ上目の子孫共有形質であることを一致して示していた。つまり、カライワシ上目は予想に反し、単系統であることがはっきりした。幼生がフォーク状の尻鰭をもつカライワシ目とソトイワシ目が祖先形で、幼生がフィラメント型と丸型の尻鰭を持つフウセンウナギ目とウナギ目が後から分岐した近縁種であることも分かった。

Inoue, J.G. et al. 2004, Mitogenomic evidence for the monophly of elpomorph fishes (Teleostei) and evolutionary origin of the leptocephalus larva, Molecular Phylogenetics and Evolution, 32, 274-286.

聖徳太子と隋の煬帝: Emperor Yang of Sui and Prince Shotoku of Japan

 「聖徳太子」(梅原猛著)によると、聖徳太子が活躍した6世紀終わりから7世紀初めの東アジア情勢は、現在に似ているという。中国において、300年ぶりに南北中国を統一した巨大な隋帝国が出現した。隣国は、隋帝国の侵略に戦々恐々としていた。朝鮮半島には、高句麗、百済、新羅が鼎立(ていりつ)し、互いに軍事および外交において、しのぎを削っていた。

 著者によると、聖徳太子は煬帝を深く尊敬していたに違いないという。実際、聖徳太子が派遣した遣隋使は「海西の菩薩天子」と煬帝のことを表現している。仏教を厚く信仰し、仏教による文明国家の建設を目標とする聖徳太子としては最大の尊敬を表現したものに違いない。しかし、「日出る処の天子、書を日沈む処の天子に送る、恙(つつが)なきや」とした日本の国書は、わがままな煬帝の怒りを買い、彼は「失礼だ。二度と見せるな」と言ったという。聖徳太子の煬帝に対する尊敬は、片思いに終わったようだ。それでも、隋は日本に対し裴世清を使者として送る。これは日本の対中国史上前代未聞のことである。高句麗や百済の僧を政治顧問においた聖徳太子は、東アジアの政治情勢を読み切って、あえて失礼なラブコールを隋に送ったのであろう。見事な判断と決断力である。さて、一方の隋はどう反応したか。

 遣隋使の派遣直前(西暦607年)に、隋は朱寛という将軍を琉球に派遣し島人一人を連れ帰らせている。さらには、次の年に再び琉球を慰撫(いぶ)せしめるために派遣された朱寛は、琉球国王の抵抗にあい、それが果たせなかったが、「布の甲」を持ち帰った。この年に来た日本の使者(たぶん遣隋使の小野妹子)にこれを見せたところ、「夷邪久(屋久島か)の国人の用いるもの」と言ったという。さらに、隋は陳陵と鎮周に1万を超える兵を預けて琉球を侵略し、国王を殺して万を超える民衆を虜(とりこ)にして連れ帰った。折しも、608年から609年にかけて、日本は隋の使者、裴世清を迎えていた。あめと鞭(むち)。聖徳太子の純粋でプラトニックな(たぶんに意識的だが、半分本気の)ラブコールに対し、煬帝はパワーポリテックスで切り返したことになる。

 さて、ここで聖徳太子が、日本にとって非常に大事な外交ポイントを中国から上げたことは注目に値する。日本の国王が中国に対等な形で国書を送り、当時の中国皇帝がそれを正式に受け、さらに返答の使者まで送り出している。さらに、その事実が中国の正式の史書である隋書にも記載されている。中国の周辺諸外国との交わりは、常に周辺国からの朝貢の形をとり、「中国皇帝はすべての土地を治める権利を持っているが、かの地は中国から遠すぎるので、とりあえず代わって治めることを命じる」という形を例外なくとっていた。周辺諸国の国王は、これを国内の統治の権威づけに使った。魏に使いを送って金印を授かった卑弥呼もその典型である。これは、現代の中華人民共和国が、その周辺国がどこも中国の一部と今言い張る根拠になっている。日本については、明らかな例外がここにある。

 以後、日本は中国を手本とした律令国家の建設に邁進(まいしん)し、仏教を中心とした大陸文明を熱心に輸入し、「和をもって貴しとなす」官僚国家、日本が誕生する。聖徳太子のこの見事な外交戦は、その端緒を開く大変重要な出来事だった。

 一方、中国においては、隋が滅亡し、代わって唐が起(た)った。その唐が隋の煬帝に諱(いみな)した煬とは、「内を好みて礼を遠ざける」「礼を去りて衆を遠ざける」「天に逆らって民を虐げる」皇帝につけられる名前だそうである。

 今、中国が再び超大国として東アジアに覇を唱えようとしている。現代中国の政治指導者たちの言動が、次世代のそれから「煬」と諱されるような事態が起こらないことを、中国と東アジア諸国の人民のために祈りたい。歴史は繰り返すかのように見えるが、まったく同じとはかぎらない。われわれは歴史から学ぶことができる。中国は隋帝国の顰(ひそみ)に倣ってはならないし、日本は白村江の敗戦の轍を踏んではならない。未来を選択するのは、われわれである。

サンケイビジネスアイ、高論卓説7月29日、許可を得て転載。

鉄隕石は地球型惑星形成領域の微惑星の破片である:Iron meteorite as remnants of planetesimals formed in the terrestrial planet region

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鉄隕石は、化学的に分化した小惑星の中心にできた鉄の核が後に壊されてできたと考えられている。鉄隕石の母天体は、ほとんどの小惑星がある小惑星帯(2.5-3.5AU)にあったとこれまで考えられてきた。しかし、小惑星帯をよく調べてみても、そのような分化した天体やその破片があまり見つからない。また、鉄隕石の母天体が直径で20km以下だったことや、それらが普通コンドライトの母天体よりも1-2百万年先にできていたという観測事実をうまく説明できない。

そこで、Bottke et al. 2006は、もう少し内側の地球型惑星の形成域(0.8-1.5AU)でできたのではないかと提案している。ここでは、微惑星はより早く成長するので、26Alや60Feのような短寿命放射性核の崩壊で、太陽系形成のかなり初期に溶ける。その結果として鉄のコアが形成される。その後、地球型惑星の成長に伴う巨大衝突で破壊され、さらに重力散乱によって小惑星帯まで運ばれて今日まで生き残ったのではないかというわけだ。

1) Bottke, W.F. 2006, Iron meteorites as remnants of planetesimals formed in the terrestrial planet region, Nature, 439, 821-824.

小惑星の化学組成分布から探る太陽系の進化:Solar System evolution from compositional mapping of the asteroid belt

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DeMeo and Carry (2014)は、さまざまな型の小惑星の分布をそのサイズと太陽からの平均距離について調べてみた。最近になり、5km-1000kmにわたる小惑星の個々のスペクトルが測定されて分類が進んだ。小惑星は、表面が高温による変成を受けて揮発成分を失った「赤い」ものとあまりそれを受けていない「青い」ものに大きく分けられる。これまで、赤い小惑星は太陽に近い方に多く、青い小惑星は遠い方に多いと漠然と思われてきた。

今回の詳細な検討の結果、かなりの数の青い小惑星が内帯に(2.0-2.5AU)、かなりの数の赤い小惑星も外帯(2.8-3.3AU)にあることが分かった。ただし、全体として、外側に行くにしたがって青い小惑星の割合が増え(内側に行くにしたがって赤い小惑星が増える)傾向はは確かにあり、最も外側にあるヒルダ群(3.9-4.0AU)とトロヤ群(5.2AU付近)は、ほとんどすべて青い小惑星からなっている。

これらの小惑星の分布は、惑星形成の理論に強い制約を与えると考えられる。

1) DeMeo, F.E. and Carry, B. 2014, Solar System evolution from
compositional mapping of the asteroid belt, Nature, 505, 629-634.

原始惑星系円盤における固体物質分布の間隙:A gap in the solid material distribution of the protoplanetary disk

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Weidenschilling (1977)は現在の太陽系の惑星の分布とその中の鉄の質量を見積もった。それらの惑星の周りに分布させてみた。鉄は最も熱に強く、これらの惑星を作った原始惑星系円盤の固体成分の分布をそのまま反映している可能性が高い。その結果、全体としては半径の-1.5乗に比例する物質分布で近似できることが分かった。しかし、太陽からの距離が2天文単位と4天文単位の間に、まわりと比べて一桁から二けたぐらい物質量が少ない間隙があることが分かった。ここは、現在は火星と小惑星がある場所である。火星の質量が地球の質量の10分の一程度であること、小惑星体全体の質量が、2x10^21 kg と地球の1000分の一程度しかないことを反映していると思われる。このような固体物質の分布の間隙の存在は、惑星形成理論に強い制限を与える。

1) Weidenschilling, S.J., 1977, The distribution of mass in the
planetary system and solar nebula, Astrophysics and Space Science, 51, 153-158.

シグナル伝達転写因子(STAT)と遺伝子発現調節: STATs (Signal transcrptionand Activators of transription)s and Gene Regulation

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STATs (Signal transducers and Activators of Transcription) は35アミノ酸以上の長さ細胞質たんぱく質である。細胞が様々な細胞外ポリペプチドと出会ったときに、遺伝子の制御に参加するために起動される(Darnell 1997)。分子遺伝学的な研究により、リン酸化チロシン部位、二量体において相手のリン酸化チロシンに結合するSrc類似部位、DNA結合部位、たんぱく質相互作用部位が見つかっている。マウスの遺伝学的な研究により、哺乳類のSTATの様々な重要な役割が分かってきた。ショウジョウバエ(Drosphila)と細胞性粘菌(タマホコリDicyosetlium dicoideum)でもSTATが発見されたことは、これらのたんぱく質の機能の起源が非常に古いことを示している。

哺乳類においては、7つのSTATが発見されている。Stat1とStat4はマウスの染色体1(人間の染色体2のq12からq33に対応)に、Stat3、5A、5Bはマウス染色体11(人間の染色体12のq13からq14-1に対応)に、Stat2、6はマウス染色体10(人間の染色体17のq11からq22)にマップされている。Stat1、3、4、5Aと5Bは750-795アミノ酸残基を持ち、Sat2と6は、850アミノ酸残基の長さである。様々なスプライシングによってさらに多くの種類のペプチドが作られているようだが良くわかっていない。

35個の細胞外ペプチドが、STATを活性化する結合基であることが分かっており、様々な生物イベントで機能している。3つのSTATは狭い活性化特性を持つ。Stat2はIFN-αのみで活性化する。Stat4はリンパ球において、IL-12とIFN-αによって活性化される。Stat6はIL-4とIL-13によってのみ活性化する。一方、Stat1、3、5Aと5Bは、たくさんの違う結合基で活性化することが分かっている。

では、STATはどのように特定の生物反応をトリガしているのであろうか?同じ細胞には、同じSTATを活性化する受容体は一つしかないことがその答えになっているかもしれない。例えば、Stat5を活性化するIL-2の受容体はエリスロポイエチン、トロンボポイエチン、プロラクチン、そして成長ホルモンの受容体はそれぞれ別の細胞の別の分化段階で存在している。したがって、Stat5は赤血球前駆細胞においてはエリスロポイエチンによって活性化され、乳房細胞においてはプロラクチンによって活性化され、既に存在している違った転写因子と協力して別の転写制御に関与する。

無脊椎動物でもショウジョウバエでStat92Eが発見された[2,3]。Stat92Eに対応するmRNAの発現パターンにより、このたんぱく質の初期胚における役割が明らかになった。

Williamns et al. [4]は、Dictystelium discoideum(粘菌の一種、タマホコリ)においてDIF(分化励起因子)によるpre-stalk細胞の分化に必要なDNA結合たんぱく質のクローンに成功した。DIFは細胞膜に可溶の親油性分子であり、細胞の中に入って活動すると考えられ、したがって、遺伝子活性化ペプチドによりも、ステロイド超族の活性化因子に似ている。新たに発見されたDNA結合因子は、700残基の長さを持ち、その活性化型はリン酸化チロシンを持っている。さらに、特にSH2領域がかなりSTATに似ている。もし、これが本当にSTATであれば、哺乳類のSTATは非常に古い起源を持つことになる。

[1] Darnell, D. E. Jr., 1997, STATS and Gene Regulation, Science, 277, 1632-1635
[2] Yan, R. et al. Cell, 84, 421.
[3] Hou, X.S. et al. Cell, 84, 411.
[4] Tanaka, T. et al. 1997, Cell, 89, 909.

天明の大飢饉、今でもリスク 玄米備蓄のすすめ

 わが家では、有事に備えて玄米を備蓄している。そのきっかけは、火山噴火だった。2010年の春(3月から4月)にアイスランドのエイヤフィヤトラヨークトル火山が噴火した。欧州の主要空港が閉鎖され、多くの観光客が足止めを食ったので覚えている方も多いだろう。このとき、私が思い出したのは1782年から88年にかけて起こった天明の大飢饉(ききん)である。日本の近世では最大の飢饉だったといわれている。天明の飢饉も、同じアイスランドのラキ火山とそれに引き続くグリムスヴォトン火山の1783年から85年にかけての噴火が原因だったとされている。

 2010年の噴火の火山性ガスの噴出量は、4月終わりの時点で、1784年の噴火の噴出量の最初の部分のそれとあまり変わらなかった。私はこれで、ここ数年で飢饉が来ると踏んで、玄米の真空パックを大量発注し、居間に積み上げたという次第である。幸いにして、2010年の噴火は5月に入ると終息に向かった。一方、1783年の噴火は5カ月続き、さらに別の火山も噴火した。このとき噴出した火山灰と硫化物が地球成層圏に数年間滞在したため、全球的に異常気象が続いた。その結果、農産物が大被害を受けて食糧不足となり貧困と飢饉が欧州全体に広がった。1789年のフランス革命の一つの要因とも考えられている。
 実は最近でもそれに近い現象が起きたことを覚えておられるだろうか? 1991年にフィリピンのピナツボ火山が20世紀で最大規模の大噴火を引き起こした。その後、全球的に冷夏傾向が続き1993年に日本では平成コメ騒動が起こった。現代科学技術は干魃(かんばつ)による不作は克服したが、冷夏による不作を完全に克服するには至っていないのだ。

 その後2011年には日本で大震災が起こり、いろいろな事件が起こったが、居間にコメが備蓄してあって、アパートに立て籠もっても何とか食いつなげるという安心感は大変ありがたかった。その備蓄の最後の段ボールがまだわが家の居間にある。この4年前の超古古米をいまだにありがたくいただいている。真空パックした玄米は、ほとんど変質していないと私は思う。

 日本は、自給が可能なコメに関しては少なくとも3年分の備蓄を持つべきだと感じている。いったん全球的な異常気象が始まったら、食糧輸入が困難になる。それに備えなければならない。まず、家庭で1年分ぐらい備蓄しよう。玄米真空パックであれば、特別な設備はいらない。食糧不足になったときに、一番困るのはわれわれ消費者だ。家族の命を守るため、大事なことだと思う。スペース的に困難な場合は、生産者か卸売・小売業者に保管を依頼する「貯米」(銀行にお金を「貯金」するようにコメを預ける)を考えてもいいと思う。次に、生産者も少なくとも1年分ぐらいの在庫を持っていてほしい。人間は、1カ月食べなければ確実に死ぬ。食糧安全保障の観点から、日本の農業を守れというなら、1年分の在庫を常に確保し安定供給のための万全を期す態勢を取ってほしい。

 最後に国家も1年程度の備蓄を持つべきだ。今、天明の大飢饉が再発しても、日本では一人の餓死者も出さないための万全の態勢を考えよう。さらに、気候が不順になると、食糧不足から近隣諸国で政治不安が表面化するのは歴史の教えるところである。それが日本に波及しないよう、外交・軍事の面でも油断なきように願いたい。

フジサンケイビジネスアイ2015年6月25日掲載
許可を得て転載